盛中国ヴァイオリン・リサイタルに寄せて

 秋らしい天気に恵まれた11月3日文化の日、毎年恒例となりました盛中国氏のリサイタルが行われました。

 昨年までの浜離宮朝日ホールから富ヶ谷にある白寿ホールに場所を移し、初めてのホールでのコンサート開催となりました。白寿ホールは2003年に創設された音楽ホールで、300席の座席にはリクライニングシートが使用され、当日には焦先生も音響が良いと評価されていました。

 焦先生はコンサートの時はいつも盛中国、瀬田裕子夫妻の楽屋を見舞われていますが、この日、先生は早くからホールに入られ、リハーサルの時点から音楽について、またヴァイオリンについて、熱心にアドバイスしていらっしゃいました。演奏者のお二人は本番前にもかかわらず、さほど緊張した様子もなく先生のお言葉に何度も頷かれていました。

 コンサート第1部は中国の楽曲5曲で開けました。盛氏が得意とする中国の曲が進むに連れ、会場の空気は次第に盛氏の世界へと引き込まれてゆきました。中国楽曲において、中国に生まれ育ち、激動の時代にもヴァイオリンを弾き続けた盛氏の魂を込めた演奏の右に出るものはいないでしょう。その後、盛氏が若い時に留学されていたロシアの作曲家、ヴィエニャフスキの曲が演奏され、内容の濃い前半となりました。後半は、シューマンから始まり、グリーグのソナタと続き、アンコールはチャイコフスキーと中国の楽曲でリサイタルが締めくくられました。

 盛氏と瀬田氏は演奏者と伴奏者として長い間活動していらっしゃいますが、年々コンビの安定感が増し、今年も息のあった音楽を舞台で披露されていました。また盛氏の音楽に対する真摯な姿勢が垣間見られ、丁寧にヴァイオリンを弾かれている姿が印象的でした。今年75歳になられたにもかかわらず、年齢を感じさせない精力的なリサイタルとなりました。

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