盛中国ヴァイオリン・リサイタル便り

 2015年11月3日、兼ねてから焦鉄軍先生ご夫妻と友好を温めていらっしゃる、中国のヴァイオリン奏者、盛中国氏のリサイタルが催されました。

 12月中旬の寒さだった前日とは打って変わって、秋晴れのさわやかな休日となり、昨年と同じ会場の浜離宮朝日ホールには、柔らかな日差しに誘われるように人々が集まりました。

 伴奏は中国で黄金のコンビと称される瀬田裕子夫人、この日演奏に使用されたヴァイオリンは1700年代イタリアのガルネリ作のものです。

 リサイタルの幕開けはモーツアルトのヴァイオリン・ソナタ第21番。母の死の前後に作曲されたといわれ、盛氏のヴァイオリンが奏でる曲想の陰影は、その時のモーツアルトの悲しみが表現されたものでした。そしてアヴェ・マリア、月の光など、音量で威圧することなく聴き手の静かな情感にアプローチする曲が続いた後、第一部の最後ではポーランドの作曲者、ヴィニエニャフスキの曲が奏でられました。マズルカにおいては盛氏の壮麗、且つ精緻なテクニックが余すことなく披露され、静から動への絶妙な移行で聴衆の方々の盛大な拍手を誘っておりました。

 第二部では中国の曲が三曲続き、最後にフランスのヴァイオリン・ソナタの最高傑作といわれる名曲、フランク作曲ヴァイオリン・ソナタ、イ長調が演奏されました。4つある全ての楽章に同じモチーフが使われており、その旋律がそれぞれの楽章で変化していく構成は、人生がなぞられているともいわれます。タイトルの原語が“ピアノとヴァイオリンのためのソナタ”となっているその名の通り、盛氏のヴァイオリンと瀬田氏のピアノの掛け合いの連続です。ヴァイオリン、ピアノ共に難易度の高いテクニックを要する名曲の演奏にも関わらず、二人のパワーは全く落ちないままコンサートは華やかに締めくくられました。

 盛、瀬田両氏が焦先生と知り合ってから約13年の月日が流れ、お二人の焦鉄軍気功への理解は益々深まるばかりです。今年3月から始まりましたインターネット配信での練習にも遠く北京より参加され、中国全土でのコンサート活動の合間を見つけては、東京千駄ヶ谷道場での練習にも参加されています。普段の生活も朝食前には気功の準備運動、夜寝る前には配信での練習と、その徹底ぶりには頭が下がるばかりです。

 気功により心身を整え、焦先生からいただいた数々のアドバイスを実践するお二人。進化した演奏を通して御恩を返そうとするその姿に焦先生への尊敬と感謝の念が感じられた貴重な文化の日となりました。

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