2015年 瀬田裕子ピアノリサイタル

 梅雨入り間近の6月6日、中国で活躍されている瀬田裕子氏のピアノリサイタルが、オペラシティリサイタルホールで催されました。瀬田氏は、夫である世界的ヴァイオリニストの盛中国氏と共に、焦鉄軍先生に師事されています。

 印象的なブルーの衣装で登場した瀬田氏の今回のプログラムは、モーツアルトのピアノソナタ第13番に始まり、長年北京に在住しているアーティストならではの中国の曲を数曲、そしてドビュッシーの版画、ショパンのアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、と続きました。

 中国の馬思聡、王建中は日本でも名前が知られている作曲家ですが、実際に作品を生演奏で聴く機会はなかなかありません。今回は焦先生から瀬田氏へ演奏曲目についてご提案があり、半分近くの時間がピアノ曲として編曲された中国の曲で占められました。

 焦先生ご夫妻曰く、これらは中国の方にとって体に馴染んだ名曲の数々だそうです。曲の解説をされる時の焦先生は京劇の節回しを自然と体で表現されていました。その土地に生まれ育った人が持つ独特の音感とリズムを再現すべく、リサイタルの数日前、瀬田氏は焦先生のアドバイスに全神経を集中させ、その内容を受け取ろうと努力されました。そして当日、その中国独特のピアノの音色に、会場に集まった方々は自然と魅了されていました。

 リサイタル後は、モーツアルトのソナタのレベルが非常に高く仕上がっていたという感想が、焦先生をはじめ音楽に造詣が深い方々から相次いで寄せられました。また、年々音色が澄んで綺麗に変化していると多くの方が感想にあげられたことも喜ばしいことでした。

 お二人は焦先生の教えを受けるために、中国各地での演奏会の合間を縫って北京より飛行機で訪ねて来られ、それを当然の事として話題にされます。焦先生に対する評価と意識レベルの高さは奏でる音楽にも反映され、これからの演奏がますます楽しみになる一日でした。

コメントを残す