あなたの笑顔と、あなたの写真、その輝きは忘れない。

〜追悼 木之下晃さん〜

 2015年1月12日(月)、午後7時39分。
 木之下晃さんが、虚血性心不全のために息を引き取られました。享年78。

 日本における「音楽写真」の分野を切り拓いて来られた第一人者であり、世界的な写真家である木之下晃さん。
 『最後のマリア・カラス』を撮られたのも、ヘルベルト・フォン・カラヤンが自分のプライベートシーンを撮影することを許した数少ない写真家の一人であるのも、木之下晃さんです。

 その木之下晃さんが、紹介者である岩野裕一さんと焦鉄軍事務所を訪れて下さったのは、2013年6月17日(月)午後2時のこと。焦鉄軍先生の『十話百言 日本人の処方箋』の巻頭に収めるために、先生という人物が伝わる写真を撮っていただこうという願いに応じられてのことでした。

 焦鉄軍先生の肖像写真を撮られる際、「先生、いいお顔しているなぁ!」とシャッターを切りながら真剣な眼差しでおっしゃっていた木之下さん。動きの写真も撮ろうということになり、「ちくしょう、ちくしょう!先生の動きはすごいのに、自分はまだ先生の決定的な瞬間から遅れてしまう。くそっ、俺って写真下手だなぁ」と飛ぶように御自身あちらこちらと動きながら、心を込めてシャッターを切ろうとされているその姿。そして最後は「先生のこと好きになっちゃったよ!」と満面の笑み。素敵でした。
 この時の肖像写真は予定されていた通り巻頭に。そして動きの写真は木之下さん御自身のアイディアによる構成で、口絵に収めさせていただいています。先生御夫妻の寄り添った写真まで撮って下さり、巻頭写真の最後を飾ることが出来ました。

 撮影後、先生御夫妻と夕食を共にされ、くつろいでの談笑。
 「自分はこれまで、伝えるべきものをもったアーティストを撮影することで、彼らのことを見る人に伝えたいと思って写真を撮って来ましたが、これからの人生では、自分が伝えたいもの、残したいものを写真に撮りたいと思うようになってきました。こういうタイミングで、先生のような方にお会いできてとても幸せです」
 「先生のような動きは屋内ではなく、ぜひ自然の中で撮ってみたい」
と言われていたことが心に残っています。

 木之下晃さんが、焦鉄軍先生の写真を撮って下さったことに、静心会として感謝の意を表します。ありがとうございました。

 あなたの笑顔と、あなたの写真、その輝きは忘れません。
 心から御冥福をお祈りします。

 2015年1月25日(日)

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